山尾志桜里
安倍首相は、どんな形であれ、国会で採決し可決成立したら、法律として100%使える、と、思っているかもしれませんが、それは、法律や政治をきちんと学んでいないことを露呈することになると思います。

このような乱暴な成立過程を経た法律は、きちんと国民に説明をして理解を得なければ、法の執行機関の側としては、使いにくい法律となってしまうのです。

もちろん、あのオウム真理教事件のようなテロ事件が起きるような事態になれば、この法律を適用して、その団体の構成員を摘発することに国民の支持は得られる、とはおもいますけれど、そのときにも、きちんとした説明責任を果たす必要があります。

しかし、万が一、一般市民に対する監視のようなことが、この法律のもとで行われることになれば、そして、執行機関がきちんと説明責任を果たせない、のであれば、この法律の運用が国民からの大きな反発をきたすことになり、この法律そのものが社会から不要、と、されてしまうリスクがあります。

私たち国民有権者は、自分たちの政府、統治機構が、この法律を使って、どのような活動を行うか、しっかりと監視していかねばならない、と、思います。

その成立過程から、使いにくい法律ができあがってしまった、と、思います。


NHKのニュースサイトから

テロ等準備罪 元裁判官「厳格な運用を」

参議院本会議で可決・成立した、「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法について、元刑事裁判官で法政大学法科大学院の水野智幸教授は、「厳格な運用が求められる」と指摘しています。

「テロ等準備罪」は、捜査機関が「組織的犯罪集団」だと認定したグループが、犯罪を計画して準備行為などを行った場合に処罰するもので、政府は、一般の企業や市民団体などは対象にならないとしています。
水野教授は、集団が何かを計画し始めた段階では、犯罪の計画なのかどうか不明確な場合があり、犯罪集団と一般の集団との区別がつきにくいと指摘しています。
水野教授は「『組織的犯罪集団』かどうかは捜査機関が判断するので、犯罪とは関係のない人がえん罪という形で摘発されることもありえる」と話しています。
このため、水野教授は、捜査機関が「組織的犯罪集団」かどうかを認定する際は、犯罪に関わる行為をしたという具体的な根拠がなければならないとして、慎重な対応を求めています。
さらに、政府が、犯罪の「計画」だけでなく「準備行為」が行われなければ処罰しないと説明していることについても、「政府の解釈は広すぎるので、捜査機関は、犯罪に使用するとしか考えられないようなものが準備された段階で判断するべきだ」としています。
そのうえで、捜査機関が法律の危険な面を認識し、処罰の範囲を拡大しないため内部の基準を作る必要があると指摘し、取り調べの録音・録画も義務づけるべきだと提言しています。
一方、捜査機関が令状を請求した場合に審査する立場の裁判所に対しては、「捜査機関の説明に疑問があれば質問をして、納得できる答えがなければ、令状を出さないという厳格な運用が必要だ。処罰範囲が非常に大きく不明確なだけに、令状段階でのチェックは重大で、裁判官は職責の大きさを認識する必要がある」と指摘しています。
そして、刑事法の研究者に対しても、「厳格な運用のため法律の条文をどのように解釈すべきかをしっかりと示してもらい、現実の事件に反映させられるようにしてほしい」と求めています。