ドイツ軍の暗号装置エニグマについては、様々な小説や映画で有名ですが、実話であることを再認識させるニュースです。
なお、イギリスのチャーチル首相が、対独戦終結後、この暗号の解読機の破壊を命じたということも有名ですが、ナチスとの戦いを勝利に導いたと考えられるこの歴史的な装置の存在が戦後明らかになることを、なぜ避けたのか、大きななぞとされています。

相手側が完璧と信じている暗号装置の解読に成功したとき、それは、相手の手の内がこちらではすべてお見通しとなるというわけですが、では、そのときから、解読に成功した側が、一番恐れることは何かといえば、相手側が暗号システムを変更することです。もし、そうされると、すべてが水泡に帰すわけで。もちろん、相手側も、いままでのシステムを踏まえて、新しいシステムを開発するわけですから、まったく無意味ということはなく、新しい暗号システムの解読装置の開発作業に、それまでの暗号解読の考え方は大いに役立つのですが、いままで簡単に読めた相手の暗号が、また、しばらくほとんど読めなくなるのは、戦争指導者側としてはとてもつらいです。

なので、暗号解読に成功したとき、相手側に暗号解読に成功していることを悟らせたくない、逆に、自分たちの暗号システムが完璧であることを信じ込ませておきたいということになります。欺瞞作戦が行われます。
たとえば、

すでに、暗号解読で、敵部隊の移動の時期と場所はわかっているけれども、あえて、偵察機や輸送機等を飛ばせて、偶然、移動中の敵部隊を発見した形にして、それからその迎撃作戦を実施に移す
これぐらいは、問題ないですが、いつも、うまいぐあいに偵察機がやってくると気づかれそうである。

エニグマ暗号装置を手に入れる必要はもうないけれども、特殊部隊による決死的な作戦を何度も実行させて、しかも、失敗させる
奪取に成功してはいけない、または、成功したと思わせてはいけないので、難しい欺瞞作戦である。倫理的に問題を感じますが、兵士の損耗は許される範囲内で、政治的なダメージは論理的に避けることができる。(戦争では、許容範囲内の損害とか、想定内の損害などという恐ろしい考えが行き交う)

イギリスのどの都市にドイツ空軍の空襲があるか、事前にわかっているけれども、あえて、そのまま、警報を発しないで、無防備のままとし、空襲を成功させる
一般市民に損害がでます。しかも、暗号解読に成功していたのにわざと対応策をとらなかったことが漏れると、政治的にかなりのダメージを受けると思われる。

などが、実際に行われたのではないかといわれています。
チャーチルが、この機械の破壊命令を出した理由がわかるような気がする。


エニグマ解読機を複製、公開へ

 第2次大戦でナチス・ドイツが暗号機エニグマを使って発信した暗号文の解読に取り組んだ当時の英国人らが、終戦とともに取り壊された暗号解読機を10年がかりで複製し、今月末に公開されることになった。大戦中の壮絶な情報戦をいまに伝える一方、現代のコンピューターの原型としても話題を呼びそうだ。

 エニグマの暗号文は当時、英中南部、バッキンガムシャー州にあるブレッチリー・パークの暗号研究所で解読された。高さ2メートル近くもある解読機が巨大なコンピューターのように並び、日夜、繊維工場の織機のように規則的な音をたてて作動していたという。
 だが、1945年に当時のチャーチル首相の指令で取り壊された。一部は戦後の冷戦期に対ソ連情報戦で使用されたともいわれるが、設計図も残されず、複製は困難を極めた。研究所の元職員らが英当局から部品の設計図を入手して複製し、6日に当時のように作動することを確認した。
 英国の数学者らが解読機を開発するまでは、ポーランド人も交えて解読作業に当たっていたが、難航を極めたという。
 解読機が導入されてからは3000以上の暗号文の解読がそれまでの数週間からわずか1日に短縮され、終戦も2年は早まったと信じられている。
 解読作業に従事していたジーン・バレンタインさん(82)はBBCテレビで、「解読機が作動する様子は美しいほどだった。自分のしていることは分かっていても他の職員のしていることは誰も知らなかった」と語り、解読機の複製に思い出をだぶらせていた。
 ただ、複製完了にはなお作業が残り、完全な一般公開は来年7月になるともいう。