この国の刑事司法のあり方が大きく変わる最高裁決定になったかと感じます。
身柄を拘留されたら、「疑わしきは罰せず」の原則がゆるぎます。拘留中止と引き換えの安易な「自供」という、本来、日本では認められていない司法取り引きのような状況が生まれますし、それは、冤罪事件につながることもあります。
警察官や検察官からの逮捕拘留請求に、無批判に安易に請求通りの令状を出す、地裁レベルの裁判官たちの意識が、人権を守ることを第一に変わることを期待しています。
なぜ、地裁レベルの裁判官たちが、警察や検察などの司法権力におもねるのかといえば、そのほうが利益があるから、であり、最高裁が明確に、その風潮に釘を刺した、今回の判断は、影響が大きいと、私は信じています。


読売新聞から

痴漢で勾留「著しく正義に反する」…最高裁決定

 電車内で痴漢したとして逮捕、勾留された大阪府内の40歳代の会社員男性について、最高裁が勾留を認めた京都地裁の判断を「著しく正義に反する」として、取り消す決定をしていたことがわかった。

 勾留には「証拠隠滅の現実的可能性」が必要としており、男性の弁護人は「安易な勾留に警鐘を鳴らす判断」と評価している。裁判官5人全員一致の意見。11月17日付。
 弁護人によると、男性は11月5日、京都市営地下鉄の車両内で女子中学生の体を触ったとして京都府迷惑行為防止条例違反容疑で逮捕された。男性は否認し、検察は勾留を請求したが、地裁の裁判官は同7日、請求を却下。だが、検察の準抗告を受けた地裁の別の裁判官が同日、「被害者に働きかけて証拠隠滅する恐れがある」として勾留を認めた。
 弁護人は最高裁に特別抗告。最高裁は「朝の通勤電車内の事件で、容疑者が(再び)被害者に接触する可能性は高くない」とした上で、勾留を認めた判断は「被害者に働きかける現実的可能性の程度について理由が何ら示されていない」と批判した。男性は同17日に釈放され、19日に不起訴処分となった。
 法務省の統計では、昨年の勾留請求の許可率は98.4%と高い水準にある。弁護人は「勾留されるだけで解雇されるなどの社会的不利益を受けることがある。否認イコール証拠隠滅の恐れと形式的にとらえず、個別の事案を正確に見てくれた」と話した。