個人が生まれながらにして有するとされる基本的人権。
それを脅かす存在としては、統治機構、宗教やイデオロギー、そして、経済至上主義があると考えています。
それらは、憲法などの法治主義、健全な民主主義の制度運用で抑制できるとよいのですが、3つ目の経済至上主義が基本的人権よりも優先されてしまうことを防ぐこと、なかなか難しい、と感じています。

大企業や資本家による経済活動を制限する仕組みは、法律に基づいて、国別に行なわれてきたのですが、経済のグローバル化という、この地球を完全に包みこんでいる巨大な経済の世界市場は、以前は「多国籍企業」と呼んでいましたが、もう、国籍とか国境とかを超えて文字通り「ボーダーレス」な巨大な組織になっています。つまり、国別の規制を困難にし、また、それらを撤廃させる方向で動いていると感じています。
いままでの方法では不十分になっている、と、その大きな危険を感じています。

たとえば、企業に対する法人税の課税について、わが国での議論を聞いていますと、その危険を感じます。低い税率の外国に合わせる必要性があるとか。
また、今年、アメリカニューヨークの株式市場に上場することになった、中国のIT関連アリババグループの筆頭株主であるソフトバンクは、8兆円近い含み益を持つことになったのだそうです。8兆円。巨額すぎて、想像もつきませんが、世界中の人に1000円ずつ配っても、なお、あまる?

今年のノーベル経済学賞は、「少数の企業が支配的な力を持ち、商品やサービスを提供している「寡占市場」について研究し、適切な規制のあり方を分析する理論モデルを構築した業績」に対して、フランスの経済学者に贈られることが決定したそうです。

世界をまたにかけた大宴会、その蚊帳の外で飢えているたくさんの人々のためにも、そろそろ、お開きにしたいと思うのですが。

日本で、このティロール教授の研究成果にそって、大企業や資本家の経済活動を抑制するような規制を導入するために、やはり、官僚機構がしっかりとがんばってもらわなければ、と、思います。
そのためには、我々国民が、主権者として、きちんとこの国の舵取りをしていかねばなりませんね。


毎日新聞から

ノーベル賞:経済学賞に仏ティロール教授 寡占市場研究

 【ロンドン坂井隆之】スウェーデン王立科学アカデミーは13日、2014年のノーベル経済学賞を仏トゥールーズ第1大学のジャン・ティロール教授(61)に授与すると発表した。少数の企業が支配的な力を持ち、商品やサービスを提供している「寡占市場」について研究し、適切な規制のあり方を分析する理論モデルを構築した業績が評価された。

 ティロール氏はフランス出身で、米マサチューセッツ工科大学で博士号を取得。企業行動や産業構造を理論的に分析する「産業組織論」の第一人者で、フランス首相官邸で経済分析官も務めた。米国人以外の経済学賞受賞は4年ぶりとなる。
 寡占市場では、利益を確保するために企業同士が結託して価格をつり上げたり、新規参入を妨害したりするといった行為が起こりやすく、こうした「市場の失敗」が社会に損失をもたらす事を防ぐため、政府による適切な規制が必要となる。ティロール氏は1980年代初め頃から、通信や金融など幅広い産業をゲーム理論や行動心理学などを用いて研究。政府が規制対象の企業について十分な情報を持っていなかったり、企業が規制に対して行動を変えたりするといった実際に起こりうる状況を組み込んだ分析モデルを構築し、どのような規制が機能するのかを理論的に解き明かした。
 近年は、市場の寡占化と同時に、電力や通信、鉄道など従来公営企業が独占していたサービスを民営化し、市場競争を導入する動きが欧米で相次いでいる。ティロール氏の研究成果は、欧州中心にこうした市場の規制や制度立案に取り入れられており、王立科学アカデミーは授賞理由の中で「経済学が、いかに実用的な重要な意義を持つかを示した」とたたえた。
 授賞式は12月10日にストックホルムで行われ、賞金800万スウェーデンクローナ(約1億2000万円)が贈られる。